こんにちは、すけ氏です。
新型コロナウイルス渦による外出自粛が長引きますね。こんな時は、普段は敬遠しがちな長いドラマやアニメ、あるいは書籍などにチャレンジしてみては如何でしょうか。
という訳で、今回は2020年4月からNHKで注目のアニメもスタートした「銀河英雄伝説」を勝手に推してみようかと思います。
銀河英雄伝説
原作は1982年の第1巻以降、累計発行部数1500万部を超える規格外のベストセラー小説。作者は本作「銀河英雄伝説」の他、「アルスラーン戦記」「創竜伝」「タイタニア」など壮大なスケールによる架空歴史長編を得意とする田中芳樹氏です。
あらすじは?
物語の舞台はいまから数千年後の未来世界。宇宙空間に進出した人類は、独裁者ルドルフにより建国された銀河帝国と、民主主義を掲げ帝国に反旗をひるがえした自由惑星同盟、ふたつの巨大国家に分かれて果てしない戦争を続けています。
宇宙を舞台に帝国VS同盟?スターウォーズみたいな?悪の支配者を正義が倒すの?
…全く違います。帝国では無気力な皇帝を門閥化した貴族が取り巻いて権力を乱用するなど、ありがちな設定もありますが…。
長く続いた戦乱は民主共和政治をも深く蝕み、自由惑星同盟もまた建国当初の理念を見失って迷走しているのです。
腐敗した君主独裁国家と、腐敗した民主共和国家による戦争は、150年の長きに渡って膠着。しかし、銀河帝国に「常勝の天才」ラインハルト、自由惑星同盟に「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリーという2人の天才が登場することで、銀河の歴史が一気に動き出します。
君主独裁政治 V.S 民主共和政治
そしてこの銀河英雄伝説の“裏テーマ”と言えるのが「独裁政治」と「民主政治」の徹底的な対比。ラインハルトとヤンはその才能に相応しい武勲を重ねて、帝国・同盟それぞれの勢力内で重要なポストを占めて行きますが!?
「平和というのはな、キルヒアイス。無能が最大の悪徳とされないような幸福な時代を指して言うのだ。貴族どもを見ろ」
――ラインハルト・フォン・ローエングラム
ラインハルトが独裁国家である銀河帝国でその軍事的才能を如何なく発揮していく一方、ヤンが功績を上げれば上げるほど、味方のはずの自国政治家にその人気を利用され、疎まれて、ことごとく足を引っ張られて行きます。
「恒久平和なんて人類の歴史上なかった。だから私はそんなもの望みはしない。だが何十年かの平和で豊かな時代は存在できた。吾々が次の世代に何か遺産を託さなくてはならないとするなら、やはり平和が一番だ」
――ヤン・ウェンリー
「このままでは来年早々の選挙に勝つことはおぼつかん(~中略~)コンピューターに計測させたところ、ここ100日以内に帝国にたいして画期的な軍事上の勝利をおさめれば、支持率は最低でも15パーセント上昇することが、ほぼ確実なのだ」
――自由惑星同盟最高評議会議長:ロイヤル・サンフォード
「大義を理解しようとしない市民の利己主義に迎合する必要はありませんわ(~中略~)どれほど犠牲が多くとも、たとえ全市民が死にいたっても、なすべきことがあります(~中略~)銀河帝国を打倒し、その圧政と脅威から全人類を救う義務が。」
――自由惑星同盟最高評議会委員:コーネリア・ウィンザー
いかに深慮遠謀があろうと、悲しいかな民主政体における軍人であるヤンには国の方向性を決める権限がありません。そしてその権限は、自らの支持率の為に、あるいは自らは安全な場所に隠れながら、国民を戦場に送り込んで恥じない政治家達が握っているのです。
「ふと思ったんだ。こんな男に正当な権力を与える民主主義とはなんなのか、こんな男を支持しつづける民衆とはなんなのか、とね」
――ヤン・ウェンリー
独裁者として思うとおりに軍と政治を動かせるラインハルトに対し、民主主義の理念を守ろうとすればするほど不利な状況に追い詰められていくヤン。このような状況下、ふたりの英雄はどのような決断をし、何のために戦い、何を守るのか?そして最後に勝つのはどちらなのか?銀河の壮大な物語が幕をあけます。
珠玉のエンターテイメントから民主主義を考える
「民主共和制」と「優れた君主による独裁」は、どちらがより人民を幸せにするのか?「銀河英雄伝説」はそんな難しい政治的テーマをも読者に問いかけます。しかし、この作品は平和の意味や、民主主義の理念をわかりやすく教えてくれる教科書的物語…ではありません。
そもそもこの作品は戦争を否定していません。まずもって主人公であるラインハルトからして戦争の申し子とも言うべき人物です。
この世で最も醜悪で卑劣なことはな、実力も才能もないくせに相続によって政治権力を手にすることだ。それに比べれば、簒奪は一万倍もマシな行為だ。少なくとも、権力を手に入れる努力はしているし、本来、それが自分のものでないことも知っているのだからな。
――ラインハルト・フォン・ローエングラム
もう一人の主人公、ヤン・ウェンリーもまた「ラインハルトを倒すことは本当に正しいのか?」「腐敗した国家を守ることに意味はあるのか?」そして「民主主義のためと人を殺し続けることは許されるのか?」と悩みながら戦い続けます。
本来、 名将と愚将とのあいだに道義上の優劣はない。愚将が味方を100万人殺すとき、名将は敵を100万人殺す。その差があるだけで、殺されても殺さないとう絶対的平和主義の見地からすれば、どちらも大量殺人者であることに差はないのだ。
銀河英雄伝説1黎明篇本文
こうした葛藤を後世の歴史学者の視点から見ることが出来るのも、本作の醍醐味です。ラインハルトとヤン、どちらに共感し、肩入れするも読者の自由。読めば自然と「戦争とは?」「平和とは?」「民主主義とは?」と考えざるをえなくなる…銀河英雄伝説は、そういう作品です。
どの作品から見ればいい?
むしろ、これが一番悩ましいかも。何しろ1982年に原作第1巻が刊行されて以来、原作小説だけで4版。コミカライズやアニメとかの派生作品だって何作も…!
まあ最近スタートしたNHKのアニメが絵柄も今風で一番親しみやすいんじゃない?昔からのファンが原作を読ませたい気持ちは分かるけどさ…。
銀河英雄伝説 Die Neue These
2020年4月NHK Eテレにて放送開始!ええ、もちろん全話録画しながら欠かさず見ていますとも!最新作だけあって最先端のCGやハイクオリティの背景美術が素晴らしい!銀河の歴史 再び…!
銀河英雄伝説(ヤングジャンプコミックス)藤崎版
封神演義で一世を風靡したフジリューこと藤崎竜氏が作画を担当する最新コミカライズ。「週刊ヤングジャンプ」より「ウルトラジャンプ」に移籍して現在もなお連載中で、2020年4月現在の最新刊は17巻(ストーリー進行は要塞対要塞辺り)。
銀河英雄伝説 OVA / 石黒監督版
1988年より本編全110話、外伝9作品52話、劇場版3作品が10年以上にわたり描かれた超大作。600名以上いるキャラクターを声で演じ分けるために、当時活躍していた声優がほぼ全員起用された結果、その顔ぶれの豪華さから銀河声優伝説と呼ばれることも。
何分作られた年代が年代なので、それなり時代を感じさせる作画です。しかし、膨大な原作小説のほぼ全てを映像化した作品は後にも先にもこのOVAのみ!
銀河英雄伝説(Chara COMICS)道原版
「銀英伝」の世界観がはじめて視覚化された作品。全11巻ですが、残念ながら原作のストーリーで言えばまだ道半ばでの完結となっています。
銀河英雄伝説(原作)
やはりファンとしては、原作小説を読んで欲しいんですよね。アニメやコミックでは端折られているような登場人物の心理、世界観、背景等がしっかり書かれているので読み応えがあります。
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